小池真理子の「危険な食卓」を読みました。
とにかく、まごうことなき殺意と裏切りが書かれている本。
後味が悪い話ばかりでなく、クスッとくる話もありますが、とにかくどの話もゾワゾワっとさせる魅力があります。
まさに「危険」な食卓です。
- 作者: 小池真理子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1997/04
- メディア: 文庫
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私が一番気に入ったのは「姥捨ての街」と「危険な食卓」です。
前者は痴呆老人の面倒をみられないと言って、デパートのトイレに置き去りにしようとしたところに男が立ち会わせてしまい、家まで着いて来てしまう話。 老婆は家まで着いてくるが、男の彼女はそれを許さない。 なぜなら、男は殺人を犯していたのでそれを隠さなくてはならなかったからだ。 結局、数日老人と居候し、やはり捨てに行くことにする男。 しかし、殺人の話を痴呆老人は覚えていて、辺りの人に話し始める。 あるおばさんはそれに対して、警察沙汰じゃないか!と熱心にその話を聞くが、男が痴呆のせいで…と割って入り事な気を得る。 しかし、殺人の話を覚えている老人をそのままにしておけず、結局、家に連れて帰るという話。
「危険な食卓」はこの本の中で一番コミカルな本でした。 夫婦の離婚の話から始まります。 究極の菜食主義者、健康主義者の妻にいい加減に付き合ってられないという夫と、自分の意に反する夫に嫌気がさした妻。 お互いスパッと離婚。
妻は本当に菜食主義、健康主義者でありとあらゆるものを同じ同士の女性と追及し続ける。 そこで、夫は満足する料理が食べられず、もっと好きなものが食べたいという欲求を募らせる。
夫は健康食品の牛乳に強力な下剤を混ぜ、妻を翻弄する。
離婚する最後の夜に、彼女の嫌うものを悪意を持って食べさせた夫。 彼女が吐くのを楽しんでいる。 今度は彼女の番である。 彼女は飲み物に「毒」と称して、夫が飲んだものの正体を明かす。 夫は薬剤師だった妻なら、本物の毒なら盛れるんじゃないか?!とパニックになり、解毒剤を懇願するということに。
最後の最後で妻に出し抜かれた夫は、妻の家に忍び込み殺害を試みようとするが、物凄い便意をもよおし、結局トイレへ缶詰に……。
彼女が持ったのは「本物の毒」下剤だった、というオチ。
この話は後味が悪くなくスッキリ、夫婦どちらにもスカッとする感じがした。 妻の健康主義を真似したら痩せるだろうなぁとどうでもいいことを考えながら。
不思議と話の一つ一つが紐解かれて行くのを楽しみたい方はぜひ。